世界最大規模のイベント CES2023 振り返りレポート
CESは毎年ラスベガスで開催される、世界中から最新のテクノロジーが集まった見本市です。CES2023にイノベーション・マトリックスでインターンをしている秋篠くんが訪れ、生で実感した最新技術やテクノロジーをリポート形式で写真と共にお伝えします!
(筆者:秋篠里駆 – Innovation Matrix, Inc. インターン)
前評判通りの韓国の勢い
まずはラスベガスの空港に降り立った時の雰囲気についてです。
飛行機を降りて最初に感じた雰囲気は、韓国のパスポートを持った人が異常に多いと言うことでした。前々から、韓国の企業の勢いが強いと言うことは聞いていましたが、それでもなお衝撃なほどに、韓国人が多かったです。
イベント開始前日、会場に向かってみると既に熱気を感じることができました。
下見に来ている観覧者やイベントブースの設営を行っている人、また一般のホテルの利用者などが入り混じる一般的に見れば異様な光景でもありました。
また、イベント当日でなくても街ゆく人から、「CESのイベントにきたのか」と聞かれるほど街の人たちも認知する巨大かつ恒例のイベントのようでした。
大企業中心のLVCCエリア
今回私は、イベントの二日間を使いLVCC(Las Vegas Convention Center)とVenetian Expoの会場を見学しました。
大まかな分類として、LVCCは大企業を中心に車産業やゲーム, IoT, デジタルヘルスなど世間一般の認識としても、一般的に今流行っている産業が中心です。
Venetian Expoは大学初ベンチャーやいまだ世間に認知されていない少しニッチな産業や会社が多い印象でした。もちろんゲームやデジタルヘルスなどもこちらのVenetian expoにも展示されていました。
LVCCはwest, north, centralなどいくつかの会場に分かれており、スピーカーから最新の知見を得ることのできるセッションを開催する会場や、実際に技術を体感できるブースの集まる会場がありました。
セッションとしては、今後のトレンドや、サイバーセキュリティ、データの扱い方やサステイナビリティについてが多いい印象でした。それらに加え、クリプトやメタバースをビジネスにどう落とし込むのかを実例を用いて、解説するセッションが多く存在したことが印象的だった。スターバックスがNFTを用いたプロジェクトを担当した人から実際の背景が聞けるなど、とても興味深いものでした。
LGエリアから始まる近未来エリア
展示会中央エリアで圧巻であったのが、LGの有機ELのスクリーンを大量に並べ映像を流しつづける、会場に入るためのゲートです。
入場するとLGのとても大きなブースがあり、自宅でできるフィットネスのためのデバイスや睡眠トラッカーのコーナーがありました。特に睡眠デバイスに関しては、イヤホン型になっており耳の血流からリラックスしているのかを判断するものです。睡眠中に眠りの深さを図ることで、より睡眠を深くするための音楽を選んでイヤホンから流してくれると言う仕組みです。イヤホンをしながら眠ると言う行為は少し違和感がありますが、睡眠の深さをリアルタイムで測りそれに対応する音楽を流す考えはとてもいいと感じました。またこのデバイスは耳に入れなくても、指で持つだけで脈を測れるほど繊細なセンサーを用いています。これからの改良に期待です。
LGのスペースを抜けると、一気に会場の雰囲気が開け多くの企業がブースを出しているエリアに出ることができます。
そこでは、昔からのゲームを現代にリメイクしたものも見られました。アーケードゲームのピンボールの演出を映像で行い、オンラインでスコアを競うことができる機械の前は、たくさんの国籍の人が集い列をなして遊んでいました。
また印象に残るゲームは、コントローラーを持たないゲームです。3D画面を空中に映し出し、手の動作によって画面操作を行うものでした。
AIが一般化したロボット分野
次にロボットコーナーに関して、まずカテゴリとしてはAIとロボットが一括りにされていることに気づきます。ロボット単体ではなく、AIとのコラボレーションがどの製品にも当たり前になっていることを感じました。
工場などで用いられるロボットアームと自律移動系ロボットがほとんどを占めていました。
特に自律移動ロボットに関しては、ただものを運ぶためのロボットはなく、坂道でも安定してものを運べることや、芝刈りの機能を備えていること、水中で動くことができることなど付加価値がついているロボットがほとんどです。
さらには移動系ロボットであっても、ただ移動するだけでなく床を掃除しながらものを運ぶ、ルンバと運搬ロボットを組み合わせたものなども展示されていました。
近未来移動手段のLOOP
また自動車の展示がメインで行われている会場にも足を運びました。そこまでの移動はTesla社によって運営されている移動手段の、LOOPを利用しました。LOOPでは地下に掘られた一方通行のトンネルを道路として使い、交通渋滞をなくすことを目指している移動手段です。こちら信号などはなく、元々告知されていた時間ですぐに移動することができました。現在は運転手が存在しマニュアルの運転ではありますが、これから申請が許可されると、完全自動運転もあり得るそうで期待が高まります。これがラスベガスだけでなく、これから世間に広がるとなるとEV車の普及にもつながるのではないでしょうか。
自動運転を前提とした車産業
車産業のブースでは、大きく分けて二つの種類の展示があると感じました。
一つは従来の形のハイブリット車やEV車に付加価値を加え、エネルギー効率を良くしたもの。外見の色が変化するBMWの車や、社内で音質を変化させることでライブの空間やクラブ空間を再現するものです。様々なエンタメの技術が車へと融合されてきていることを実感しました。
もう一つは完全自動運転を予測し、運転席をなくした車内でよりエンタメやリラックスができるように設計された空間を提供するものです。
そもそもドライバーが存在しないので、車内の座席の向きは前を向いている必要はなく向かい合ったり、お互いが外を見るように背中を合わせるように変化させることもできます。
具体例としては、Uberや飛行機に対抗する策として、完全自動運転の車の中でゲーム体験ができたり、瞑想ができたり、カラオケができたり、仕事の会議ができたりと用途に合わせてカスタマイズできるタクシー構想の発表がありました。ちなみにこちらの企業はToyota系列の日本の企業でした。
個人的には、実現するまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、SF映画で見た世界観も現実味を帯びてきていると一番実感した一つの瞬間です。
スタートアップや国別ブースの立ち並ぶエリア
またもう一つの会場内では、もう少し小さな規模の会社がブースを構えていました。こちらのブースでは、まだ製品化したばかりのフェーズの会社や、アイデア段階で顧客の感想をリサーチにきている会社、また海外展開を考えておりフィードバックを欲している会社など、アイデアがとても面白い会社が集まっているエリアです。
こちらで気になったのは、家の中で浪費する水を減らすという技術です。こちらは、アマゾンのようのな家電を扱う企業やトイレのメーカーが取り組んでいました。アマゾンを例にとると、シャワーをしている時に体を洗う時以外に水を止めている人はあまり多くないと言われています。その汚れていない水を回収し、独自のマシーンでフィルタリングすることで水を再利用し環境に優しくするコンセプトです。現在は欧州でのみ販売されていますが、アメリカでも近々発売されるようです。値段はフィルターやシャワーヘッドなどを含め、約$5000とのことで、これは導入者が増えるのではと考えられる。
注目されているロボットやアシストスーツ
一社目はGerman Bionicのアシストスーツ”Clay X”です。こちらは動力ありのアシストスーツであり、2023年CES innovation awardを獲得しています。このアシストスーツの特徴は、リアルタイムで体にかかっている負荷を計測しクラウド上で管理している点です。
また補助できる重量は30kgまでと、かなりの高重量まで対応していることがわかります。
また完全防塵、防水設計であることから過酷な現場であっても環境によらず利用できることも特徴です。
2社目はHills Roboticsで、こちらは韓国の企業で、2020にもCES出展経験があるそうです。
この企業のLo-robotがAMRとして、目的地に自動で移動したり、人について移動することができたりします。スピードは最速1.2m/sで、耐荷重量は100kgまでです。
この会社はその他、AMRの消毒ロボットやスクリーンを表示することによって人を案内するロボットの開発も行っています。
3社目はarchelisです。こちらは日本の企業で「世界から立ち仕事のつらさをなくす」をミッションに経営されています。今回のCESでは、J-startupという日本からの企業が集まるブースにて展示をされていました。多くの方が実際に体験し、効果を体験していたようです。こちらは、立ち姿勢を続ける時に、足元を固定し支えることで足から腰の負担を取り除くアシストスーツです。主に医療や工場向けに製品を作っています。
まとめ
CESに参加された方もされなかった方も、全体の雰囲気を掴んでいただけたでしょうか。
様々なテクノロジーと融合して、ロボット業界が栄えていくことを楽しみにしています。
この記事を読まれている方は、ロボットやテクノロジーに敏感な方なので、もし参加されなかった方は来年のイベント参加検討されてはいかがでしょうか。