モバイルロボティクスのこの先10年の予測
この1月にmobilerobotguide.comで記載されたマイク・オイッズマン(弊社CEOの元同僚)の記事の一部を和訳しましたのでご紹介します。
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先ず、2019年は過ぎましたが、モバイルロボティクスの世界にとって印象に残ったいくつかの注目すべきハイライトをご紹介します。
2019年の概要:
- International Data Corporation(IDC)Worldwide Robotics and Drones Spending Guideの新しい更新によると、ロボットシステムとドローンの世界的な支出は、2019年から1%増加し2020年には1,287億ドルとなります。
- 脚付きロボットは、実用可能なモビリティプラットフォームに進化しました。 Boston Robotics、Agility Robotics、Ghost Roboticsなど、いくつかの企業が脚付きロボットソリューションを商品化しました。
- 自律移動ロボット(AMR)の顧客展開は、単一ユニットのパイロットプロジェクトから施設内の数十および数百のロボットのマルチユニットフリートに成熟しました。 (最近のエグゼクティブインタビューからの事例証拠に基づいて)
- 倉庫管理とロジスティクスは、AMRの主要なアプリケーションに成熟しています。
次の10年に期待を膨らめ、この記事では、自律型モバイルロボットの商業化と継続的な市場での受け入れを導くと予測される傾向に注目します。
AMRの商用利用は、制御された環境内での制御システムとナビゲーション方法の進化を支援しています。昨年、自動運転車の進歩は少し停滞していましたが、AMRは急速に進化し続けています。今日、AMRの限界に挑戦しているロボット工学者は、将来の自律走行車の安全なオペレーションを可能にします。
今後10年間のモバイルロボットに関する上位5つの予測は次のとおりです:
1.Robots as a Service (RaaS/サービスとしてのロボット)、自律ソリューションの主要なビジネスモデルになる
2.AMR市場は、製品からソリューションへと進化する
3.AMR市場は、ロボットサービスプロバイダーの機会を創出する
4.リサーチは熱い!
5.ソフトウェアの市場支配をめぐる戦いが始まったばかり
1. Robots as a Service (RaaS)、自律ソリューションの主要なビジネスモデルになる:
2019年は、Robots-as-a-Service(RaaS)がその実用の可能性を実証した年でした。 2019年、複数のロボット企業が、RaaSビジネスモデルに基づいて、すぐに使用可能な自動化ソリューションを提供しました。ほとんどのアプリケーションでは、ソリューションはロボットのメリットではなく、システム全体のスループットで販売されており、パフォーマンスは主要業績評価指標(KPI)で測定されています。
買い手と売り手はどちらも、RaaSが購入プロセスをより簡単かつ迅速にさせる、と意見が一致しています。 RaaS契約での継続的なサポートのコミットメントにより、ベンダー自身も確実にコミットメントを達成できます。多くのRaaSユースケースでは、成果物は実際にはデータです(例:小売在庫またはプラノグラムコンプライアンス)。この場合、ロボットはデータ取得プロセスを実行するための新しい方法にすぎません。
Locus Robotics、inVia Robotics、Savioke、Bossa Nova、KnightScopeなどの企業は、RaaSの道をさまざまな市場セグメントに作り上げました。開拓者にとって必ずしも簡単なことではありませんでしたが、RaaSは、サービスとしてのソフトウェアがエンタープライズソフトウェア市場を変えたのと同じように、商業ロボット市場を変えました。
契約されたKPIに対する成果は、今後10年間AMRソリューションの主要な成功要因になるでしょう。 RaaSビジネスモデルを中心としたソリューションを構築していないモバイルロボットのスタートアップは、今後10年間で信頼性を獲得するのに苦労すると予測します。これからも新しいアプリケーションが実用可能になると同時に、新しいビジネスモデルが進化すると考えています。
2. AMR市場は、製品からソリューションへと進化する:
ロボティックスは注目を集めていますが、ロボット技術だけではもはや主要な販売要因にはなりません。 5年前、初期のAMRの先駆者は、モバイルロボット「プラットフォーム」で市場に参入しました。現在、これらのプラットフォームベンダーのほとんどは、ソリューション販売に移行しています。
完全なソリューションには、物理的なロボットだけでなく、成熟したソフトウェアソリューション(エンタープライズシステムへの統合を含む)と組み合わせたアプリケーション固有のペイロードも含まれます。
Fetch Roboticsは、プラットフォームプロバイダーからソリューション販売者への進化に成功した初期のパイオニアの一例です。 Fetch Roboticsは現在、HMICart、CartConnect、RollerTopソリューションなどのソリューションを提供しており、プラットフォームとしてのロボットのマーケティングを意識的に抑制しています。
このソリューションの傾向は、AMR市場が「早期導入」バイヤーから統合およびエンジニアリングプロジェクトにあまり関心がなく、初日から保証された結果を確認したい「メインストリート」バイヤーに成熟しつつあることを示しています。
さらに、過去18か月に立ち上げられたすべてのロボットスタートアップは、特定のニッチアプリケーションに焦点を当てています。彼らは、ソリューションの運用に必要なすべてを提供し、RaaSビジネスモデルを通じて迅速な価値実現を実証しています。
3.AMR市場は、ロボットサービスプロバイダーの機会を創出する:
システムインテグレーターとの別れ
完全なソリューションを提供したいという願望が、AMRの市場バリューチェーンを過去の産業用ロボットサプライヤーとは異なる形に形成しました。多くの「クラシック」システムインテグレーターは、AMRプロジェクトのバリューチェーンから切り離されています。これは特に、モバイルロボット企業が完全なソリューションを提供し、エンドユニットハードウェアのカスタマイズを制限したい(サポートのため)RaaSベースのソリューションに当てはまります。
ロボットサービスプロバイダーの登場
AMRバリューチェーンの興味深い傾向の1つは、いくつかのAMRベンダーがハードウェアサポートを国内および地域のフィールドサービス企業にアウトソーシングしていることです。これらのフィールドサービス企業は、複数の製品ラインをサポートし、ロボットベンダーに合理的なコストのSLAを提供を可能にしています。
4.リサーチが熱い!
大学でのロボット工学の研究は、より多くの学生がロボット工学またはSTEMでのキャリアを探求するにつれて成長しています。現在、市場に出回っている研究ロボットプロバイダーはごくわずかです。商用システムは高価で閉鎖(アーキテクチャ的に)されているため、大学の研究室では使用していません。
ロボットハードウェアは、コモディティ化の曲線上にあるポイントまで成熟しました。一方、ソフトウェアは進化し続けています。ロボットの知覚、センサーの融合、制御、経路/作業の最適化、およびオーケストレーションの最先端は、研究で注目を集めている分野です。
研究所はハードウェアを使いたい
その結果、大学教授は、研究および教育の目標を達成するためにラボで使用できる信頼できる研究プラットフォームを探しています。基本的なニーズは、迅速なプロトタイピングのための完全なハードウェアプラットフォームを提供する市販の既製システムです。
2019年のBotnuvoの登場は、過去5年間で見過ごされてきた市場機会を埋めるために出現した新しい会社の1つの例であり、商用AMRアプリケーションの開発に注目が集まっています。成長するロボット労働力を設計およびサポートするために必要なすべてのエンジニアと技術者のトレーニングを支援するために、今後この様なソリューションが登場すると予測しています。
5.ソフトウェアの市場支配をめぐる戦いが始まったばかり
過去20年間のPC市場と同様に、AMR市場はハードウェアの革新ではなくソフトウェアの革新が差別化要因となる段階に入りつつあります。そして、Microsoft対MacOS対Linuxオペレーティングシステムの戦争と同様に、AMRソフトウェア分野でも同様の「オペレーティングシステム」の戦いが繰り広げられています。
機械学習と人工知能パイプラインの適用は、近い将来にかなりの人材と投資を引き付ける革新の重要な分野の1つです。これらはすべて、支配的なロボットオペレーティングシステムのサプライヤとして浮上できる企業にとって大きなチャンスです。
イノベーションのフロンティアは、現在モバイルロボット群の認識、制御、クラウドインタラクション、ロジスティック操作の進化にあります。この来るべき戦いに向けて準備を進めているソフトウェア会社がいくつかあり、努力を報う為に大きな戦車を構築しています。
今後10年間のこれらの企業の戦いの場は、自動化システムを設計および展開しているアプリケーション固有のロボット企業(またはロボットサービスプロバイダー)の将来が掛かってくるでしょう。
オープンソース側では、ROSは活発で、その背後に成長し活発なコミュニティがあり、ほとんどの大学教育および研究プログラムはROSで実行されているため、卒業エンジニアおよびコンピューター科学者は既にROSの使用方法に精通しています。 ROSの基盤の上に構築された多くの商用システムが利用可能です。ROSは、若いロボット企業がソリューションをより迅速に市場に投入できるようにしました。
結論
2019年は、すべてのAMR市場セグメントで前年比成長率が増加した年でした。この傾向により、今後10年以内に産業用および協働ロボットの売り上げを上回る軌道に市場が置かれました(ABI Research参照)。この市場が今後10年にわたって他のイノベーションを追い共に成長するのが楽しみです。
リソース記事:
https://mobilerobotguide.com/2020/01/09/predictions-for-the-next-decade-of-mobile-robotics/