RoboBiz2019リポート

-1、ロボットによる環境問題解決のニーズ-

今年も、アメリカ最大のロボットカンファレンスRoboBiz2019が開催されました。今回のブログから「RoboBiz2019リポート」として、興味深かった講演内容や会場の様子等をお伝えしていきたいと思います。

今回のカンファレンスでは産業用物理ロボット以外に、人間社会でのロボットニーズについての講演がありました。その一つを第一弾としてお伝えします。

 

基調講演するアダム・カントール氏 (Adam Cantor)

掃除ロボットで一躍有名となったアイロボット社のシニア・エンジニアであり、RSE (Robots in Service of the Environment 「環境に役立つロボット」)のエンジニアリングディレクターである、アダム・カントール氏 (Adam Cantor) が、RoboBiz2019の最後を飾る基調講演を行いました。

氏の講演は、『地球規模の環境災害や侵略種から、世界の海洋汚染まで、人間は地球の未来において重要な役割を果たして来た。我々は偉大な技術的および科学的発展の時代に生きている。これらのツールを使い、違いを生むときが来た!』という宣言からスタートしました。その具体的な話として、氏は、ミノカサゴ (Lionfish) という、アメリカの大西洋側の沿岸で多くの被害を出してきた外来種に対抗するロボットを紹介しています。

 

ミノカサゴとは、米沿岸で1980年代から繁殖するようになった外来魚です。美しいサンゴ礁をわずか数週間で荒廃させ、在来魚も次々に餌にしてしまいます。米ロードアイランド州から南米ベネズエラにかけて大西洋に面した一帯で被害を拡大させてきました。現在、インド太平洋まで生息し、自然生息の17倍の密度で米沿岸を侵略しています。

驚くべきはその繁殖力と生命力。ミノカサゴは食物連鎖の頂点に位置して天敵は存在せず、卵を3万〜4万個を4日おきに産むほど繁殖力が強く、順応性も高いのです。また自分の身長の半分の長さの魚を食べることも出来、30分に魚を20匹も食べる貪欲さがあります。そして寿命は30年という恐るべき魚なのです。それに加え、ミノカサゴには18の有毒な棘があり、他の海洋生物にとって魅力のない食料源で、このままではサンゴ礁が全滅してしまう危機にあります。これまでのところ、繁殖を食い止める手段は確立されていなかったのですが、その対策の決め手となるかもしれない駆除ロボットの開発が進んでいます。

そのきっかけは、米ロボットメーカー、アイロボットのコリン・アングル最高経営責任者 (CEO) がバミューダ諸島で地元の漁師地保護団体から、ミノカサゴの被害を伝え聞いたことでした。そして、その駆除ロボットの開発が持ちかけられ、資金提供の申し出も受けたアングル氏は帰国するとすぐに非営利団体 (NGO) のRSEを創設しました。ロボットの掃除機「ルンバ」のために開発した遠隔操作技術に感電装置を組み合わせ、ミノカサゴ駆除ロボットの設計が出来上がったのです。

駆除ロボットは、水中でカメラを使ってミノカサゴを探し、見つけると2枚の電極で挟んで感電死させ、その死骸をロボットの体内に吸い込んで回収する、という仕組みです。ロボット駆除の仕組みは簡単で効率的ですが、実用化には課題も残っています。ミノカサゴの個体群に本当に影響を及ぼすには、多くの駆除ロボットが必要となります。そのため、RSEは駆除ロボットの値段を消費者にも買える程度にまで引き下げ、スキューバーダイビングや漁師に使ってもらうことを目指しています。それはつまり、ミノカサゴを捕まえることによって、経済的にメリットを受けられるという、相乗効果をもたらすことです。

実際、すでにWhole Foodsともミノカサゴの売買契約が成立しており、レストランや家庭でミノカサゴを食べることによって、漁師の収入に繋がる仕組みが出来上がっています。魚場を維持するために、侵略魚を確保するという動機だけはなく、確保したミノカサゴを買い取るという対価で、漁師の経済的需要を満たす必要があるのです。これによって、一過性ではない持続可能なビジネスプランが可能になっています。またそれに加え、ミノカサゴを確保する過程において、サンゴや水の調査も行うことも出来、環境データの構築にも貢献できるという、派生したメリットにも繋がっていきます。

現在、環境問題の課題を解決するには、その場しのぎではない、全てに対してポジティブな影響を及ぼす”持続可能な”解決が求められています。現在のロボットの開発や実用化は、私たちが直面している環境問題を根本から解決してくれる大きな可能性をも秘めているのです。目的を達成させるために、多くの人を巻き込み、経済的にインセンティブを持たせながらアイデアを実現するということに、とても感銘を受けた基調講演でした。

RSEホームページ:https://www.robotsise.org/