米シリコンバレー「RoboBusiness」を振り返って
1、シリコンバレー流、スタートアップ企業の登竜門

(筆者:大永 英明)

 

毎年、9月にシリコンバレーで開催される「RoboBusiness」で話題になったトピックから、ロボット業界の今を見つめます。

 

そもそも「RoboBusiness」とは・・・

 物流ロボットやドローン、自動運転車などの非製造ロボットを主な対象としたアメリカ最大のカンファレンスです。最新の家電・パーソナルロボット、教育ロボットなどが数多く展示され、キーパーソンたちの講演や大学の研究報告、様々なワークショップが開かれます。

 米シリコンバレーで2004年に約1万人の業界関係者を集めて開催された「RoboNexus」 が前身で、これまで毎年秋にピッツバーグやボストンで開催されてきたが、13年から場所を米サンノゼに戻し、18年も同地で開催されました。

 

 筆者は、日米のロボット業界に40年以上携わっているプロフェッショナルという事もまり、日本の「月刊ロジスティク・ビジネス」に過去3年間、”物流ロボットマーケットの最新動向 米シリコンバレー「RoboBusiness」報告”として記事を書いてきました。過去4〜5年のアメリカでの動向変化などをベースにロボットビジネスに特化したピッチコンテスト、ロボティックスとAIの融合、AIと雇用の関係、ロボットの変還などのテーマでブログ記事を書いていきたく思います。

 

 第一弾は、毎年ロボビジネスで大人気のイベント「ピッチファイア(PitchFire)」をご紹介します。この企画は、一言で言えばプレゼンテーションコンテストです。発表するのはスタートアップ企業たち。約2分間の持ち時間を使って、自分のビジネスと製品をアピールします。その審査員というのが、ロボットビジネスの投資しているベンチャーキャピタリストたちです。まさに需要と供給が合致した企画ですね。優勝者には5千ドルの賞金が授与されまするだけでなく、一年を通して共同主催者であるロボビジネスとロボティックス・トレンドでのメディア露出や、投資家達とビジネスプランや戦略を相談できるというメリットがあります。また他の企業も、審査員やピッチトークに興味を持った投資家たちが出資をしてくれるかもしれない、というチャンスの場です。

 

 ここ3年で優勝を勝ち取った企業とロボットをご紹介します。まず、2016年は芝生のメンテナンスや落ち葉の掃除、雪かきなどの庭仕事を担うKobi社のロボットが優勝しました。2018年現在、Kobi社のホームページトップにはこのロボットが登場し、同社の主力商品になっているようです。2017年は、病院患者の処方薬をロボットが分注し、パッケージ化することで投薬ミスをなくそうと考えられた、ポーランドのユニットドーズワン(UnitDoseOne)社が優勝しました。2018年は、Southie Autonomy (http://southie.ai)というマサチューセッツ州にあるロボットの自動教示システムを提供する会社です。このシステムによって、ロボットのセットアップ時間と作業員に要求されるスキルを減らし、ロボットを使用することに対する障壁の軽減を目的としています。簡単な生産マテリアルハンドリングおよびキッティングアプリケーションに適しています。

 実はこのスタートアップ企業と投資家たちの関係は、このコンテストのみならず、シリコンバレーでは浸透しているシステムです。事実、このコンテストに参加していた企業の多くは「KickStarter」などのクラウドファンディングを使い、投資家たちから資金を調達しており、販売の計画が具体化していました。

 またシリコンバレーでは、こうした援助に加え、民間への技術移転に積極的な大学や研究機関、起業家を支援する弁護士や会計士などの専門家、将来有望な技術を先取りしたい大企業のリサーチャーらが集結し、イノベーションやものづくりを加速させる「エコシステム」が形成されています。昨今、シリコンバレーから社会に大きなイノベーションを起こす企業が数多く誕生しているのも頷けますね。

 (このエコシステムのロボット版で中心的役割を担っているのが「SRIインターナショナル(旧スタンフォード研究所)」が主たるスポンサーであるNPO法人「Silicon Valley Robotics(SVR)」です。SVRはシリコンバレーでロボットの開発、ビジネスに携わっている個人・団体向けの情報セミナーやネットワーキングを行なっており、ロボビジネスの運営に密接に関わっています。)