米シリコンバレー「RoboBusiness」を振り返って

– 3, AIは雇用を生み出す?!

筆者:大永 英明

ロボットマーケットの最新動向を、毎年開催されるRoboBusinessから見つめるシリーズの第3弾です。
 
 前回、ロボット業界でもAIの存在感が増している現状をお伝えしました。今回はAIの登場によって危惧されている人間の雇用が失われるのではないか、という問題について考えていきます。
 
 昨年の国連報告によると、第一世界諸国のすべての雇用の約3分の1は、今後15年間でロボットやAIに奪われるであろうという試算が出ています。この報告書が過度に悲観的であることにしても、数百万人もの人々が自動化の影響を受けることは間違いないでしょう。ファーストフード、小売、手荷物および出荷の時間従業員は、すでに交差領域に入っています。3K(きつい、汚い、危険)と言われている作業から人間が解放されるという意味では、確実にそれらの仕事は無くなっていく方向にあると言えます。しかし、同時に新しい仕事も生み出さているのです。CNBCの報告によると、AI とロボティックスの導入は 2022年までに約6、000万の仕事を生み出すそうです。7、500万の仕事がAIやロボティックスによって置き換えられますが、13、300万の新しい雇用が生まれます。よって、5、800万の雇用増加となります。つまり、ロボットの出荷は増えることは事実ですが、雇用も増えるということです。それはどのような雇用なのでしょうか。ロボットが行う仕事が増えるのでその作業がなくなるのは事実です。よって、従業員の労働スキルレベルを上げ、新しく生まれるポジションに対応していく必要があります。つまり、排除よりスキル向上が必要であるとシャーリーン・ストークス博士(Dr. Charlene Stokes)Director, Human-Machine Social Systems Lab, MITREは言います。
 
 2018年のRoboBusinessの基調講演で、IBMワトソンのVPであり、CTOのロバート・ハイ (Robert High) 氏がソーシャル・ロボットについて次のようにも語っています。「消費者向けの商品は、量はでるが、低マージンであるのでAIの搭載は難しい。それに対して、産業用は効率や性能をAI分析で向上させる要求が高い。AI/ロボットは人間にとって代わって作業をするのではなく、人間がより良い作業を行うために利用されるべきである。
パソコンや携帯で育った現代の若者の教育レベルは非常に高い。よって最低賃金の高騰があっても、ファーストフードのようなところでの仕事とスキルが合致しない。これは大きな社会問題として発展している。そのスキルと労働作業のミスマッチという理由だけでも、ロボット化が必要となる。
グローバル社会におけるロボット化により世界での自動化コストに大差がなくなった。ゆえに、製造業がアメリカに戻りつつある。」
  
 実際、アメリカの物流においては60万のポジションが定常的に埋まっていません。ロボットはローレベルの仕事をし、人間はもっと知的な仕事を行う必要があるとケイティー・ステビンス(Katie Stebbins)氏、マサチューセッツ大学 経済開発担当副社長も語っています。

 つまり、AIやロボットによって失われる雇用もありますが、それは教育レベルの高い人間にはすでにミスマッチな仕事でもあります。そこをロボットで代替えすることにより、人間はよりスキルの高い、生産性のある仕事をすることができます。とういうことは、人間も変化およびニーズに応じて柔軟に新しいスキルを学んでいく事が必然である、ということを感じました。