米シリコンバレー「RoboBusiness」を振り返って

-5,ロボットの導入とサービス

(筆者:大永 永明)

ロボットマーケットの最新動向を、毎年開催されるRoboBusinessから見つめるシリーズの第5弾です。

 これまでAIとの融合などロボット業界の変遷をお伝えしてきましたが、実際これからロボットはどう導入されていくのでしょうか?

 アメリカのEC市場は、今後も年間10%の成長が予想されています。20年には市場規模が$5290億ドルに達するとのことです。しかし、拡大するこのEC市場の労働力ニーズには季節性があることが難点です。クリスマス前のピークと閑散期とでは4倍の違いが出るとのことです。そこで、年間を通して労働力を安定的に確保するにはロボットの短期レンタルが有効であるという考えが出てきます。

 このRobobusinessでも2016年時点で、ロボットの価値はソフト、つまりサービスにあるという考え方が定着していることを感じていました。その頃から、サービスに応じて課金する「RaaS (Robot as a Service)」のビジネスモデルが台頭してきていました。その後、2017年、2018年ともに「RaaS (Robot as a Service):サービスとしてのロボティクス」というタイトルでパネルディスカッションが行われています。ここでいう「RaaS」というのは「SaaS (ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の頭文字を、Robot (ロボット) のRに置き換えた言葉です。すでにエンタープライズソフトウェア市場では「SaaS」の導入で、数々の成功実績があります。そのため、RaaSもロボットを導入するリスクを低減し、市場に多様性をもたらすと期待されています。


 まず、2017年は「サービスとしてのロボティクス:実現可能性と機会」というテーマでパネルセッションがありました。そのセッションの中で、RaaSの利点は次のように語られています。「ユーザーは使用の費用を経費として計上できる。つまりロボットを固定資産として購入するのではなく、利用料を支払って利用するという財務的選択肢が増えたのである。従来のリースとは違い、料金が固定ではなくサービスの利用度に応じて支払う点である。一方、RaaSのプロバイダーは、必要な台数のロボットを事前に用意しなければならないため、莫大な資金が必要となる。ただし、継続して収入を得られる上、ユーザーの利用実績データをもとに重要な分析を提供するという新しい価値を実現できる。」

 一方、2018年に開かれたパネルディスカッションでは、RaaSの定義と解釈がパネリストによって様々であり、まだ定着していない印象を受けました。アデプト出身のBlue Workforceを創業したプレベン・ホーネット氏 (Preben Hjernet) CEOはこのセッションで、RaaSは経済的なエンジニアリングとウェブ連携に有効である一方で、独自の技術的アプローチ、カスタムエンジニアリングの構築を妨げると指摘しています。また、Ubiquity Roboticsのデビッド・クローリー (David Crawley) 氏は、「ロボットを購入するかレンタルするかの判断は、人手による作業をアウトソーシングする時と同様である。すなわち会社の強みにしたいシステムを構築するのであれば、ロボットを購入して社内で仕組みを開発すべきだ。一方で、ロボットに警備させたり、物流のピーク時に社内作業能力や配送を確保したいという話であればRaaSは有効だ。」と語っています。

 また別のセッションでは、プロクター・アンド・ギャンブル (P&G) のロボティクス責任者のロバート・ボーイリンガー(Robert Borllinger)氏が、次のようにロボットを導入していると紹介がありました。彼の会社では”散弾銃方式”で多くのロボットメーカーやシステムインテグレーターと取引しているとのことです。それによりプロバイダー間の人的・技術的なネットワークを構築して、そこから社内のインターフェイスアーキテクチャーを作り上げ、最終的にはそれを標準化することを目指しています。技術エキスパートとビジネスの実務家が一緒にプロジェクトに取り組むことで、ビジネス全体への影響を強め、さらにはサプライチェーン全体の戦略を構築する考えだということです。

 ロボットの導入方法は今後、RaaSを初め、様々な多様性を持っていくことが予想されます。自動化を効率よく、より省人化に結びつけるためには、この導入方法というのが大きな鍵となっていくことでしょう。