2022年の技術・ビジネス展開を展望するロボティクス・リーダーたち
昨年末、Robotics 24/7の ”ロボティクスリーダーが振り返る、2021年の挑戦と成果” という記事を日本語訳して掲載しましたが、そちらの続編です。2021年年末にアメリカのロボティクスリーダーたち(イノベーション・マトリックスのパートナー会社である、inVia RoboticsのCEO Lior Elazary氏もその一人)が、2022年のロボット業界の技術進歩やビジネス展開などの展望を語っています。彼らの展望に、2022年にロボットがどのように進化していくのか、とてもワクワクします。以下、記事を日本語訳しました。
ロボットユーザーにとって、来年は何が改善される必要があるのだろうか。6人の専門家が来年を予測しています。
2021年が終わろうとしている今、労働者不足やサプライチェーンの課題に直面し、世界的に需要が高まっているという点で、最近のロボティクス動向を振り返る良い機会であると言えます。また、オートメーションがどのように発展し、業界のニーズに応えていくのか、水晶玉を眺めるような時間でもあります。
Robotics 24/7では、ロボット協会、エンドユーザー、サプライヤーを代表する以下のオピニオンリーダーに、それぞれの考えを聞いてみました。
- 世界の産業界の利用状況を報告するトップ組織である国際ロボット連盟(IFR)の事務局長、Susanne Bieller 氏
- マサチューセッツ州のロボット・エコシステムの発展を目指す組織、MassRoboticsのエグゼクティブ・ディレクター、Tom Ryden 氏
- 自動化と人材育成による米国の競争力向上を目指す官民パートナーシップ、Advanced Robotics for Manufacturing (ARM) Instituteの戦略的イニシアティブとアウトリーチ担当副社長、Suzy Teele 氏
- FedEx Express社のシニアテクニカルアドバイザーで、ロボット工学のユーザーとして知られ、業界の支持者でもあるAaron Prather氏
- 協調型自律移動ロボット(AMR)を提供する6 River Systemsのマーケティング担当副社長、Fergal Glynn 氏
- ソフトウェアとロボティクスをサービス(RaaS)として提供するinVia Roboticsの創設者兼CEO、Lior Elazary 氏
使いやすさ、向上するセンシング
来年、どのようなロボティクス機能の向上を期待しますか?
Bieller : 使いやすさの向上とセンス&レスポンスの改善です。大手ロボットサプライヤーはこの2つのテーマに取り組むでしょうし、アドオンとしてソリューションを開発する専業企業も出てくるはずです。
簡単にプログラムでき、簡単に教えられるロボットに対して市場ニーズがあるのは明らかです。この能力によって、さまざまな新しいアプリケーションや顧客が開拓される可能性は非常に大きいと言えます。この傾向は2022年、そしてその先まで続くでしょう。
また、環境とのインタラクションを可能にするために、ロボット工学における機械学習の利用がますます増えていくと思われます。2022年には、例えば商業的なピックアンドプレースのアプリケーションに機械学習が導入されるでしょう。これによって、レスポンシブ・コラボレーションという目標に徐々に近づいていくことになるでしょう。
Ryden : 今後は、ロボットの使いやすさやプログラミングの簡略化など、大幅な改善が進むと思います。そうなれば、より柔軟な応用が可能になります。
また、ロボットが動作している環境をよりよく理解できるような新しいセンサーが開発されるのも楽しみです。
Teele : 協働ロボットの進化、リプログラミングの容易さ、AIの活用が進むことを期待しています。
Prather : ビジョンとAIの大きなブレークスルーが見られると思います。ピックアンドプレースのアプリケーションの改善と高速化だけでなく、室内環境から屋外環境への移動など、モバイルロボットの新しいユースケースを切り開くことにつながるのではないでしょうか。
Glynn:AMRは今後も進化を続け、オペレーターとの連携機能を拡充していくでしょう。
また、倉庫管理者が複数の現場で起きていることをモニターし、クラウドベースのソフトウェアシステムから遠隔でオペレーションを調整できる能力も、今後ますます向上していくでしょう。
モバイルロボットは、ハードウェア、プロセッシング、ソフトウェアなど、あらゆる面で改善を続けていくでしょう。このようなアップデートの積み重ねが、最終的に企業に最適なフルフィルメント・ソリューションを提供することになるのです。
Elazary : すべてのモバイルロボットの機能が向上します!私たちの業界は、人生を変えるような技術を実用化しましたが、それはまだ初期段階にすぎません。
ピッキングのような既存のアプリケーションでは、まだまだ改善できることがたくさんあります。オーダーバッチの効率化。ピッキングの経路をもっと速くすることもできます。
私たちは常に、今やっていることにどんな改善点があるのかを探しています。例えば、今年、ロボットのピッキングスピードを35%高速化しました。
RaaSモデルでは、これらの改良はすべて、サブスクリプション価格の一部であるシステムアップグレードによって自動的に行われます。新しい技術を採用する際に重要な、陳腐化の心配もありません。
進化する機能
ロボットやロボット群のソフトウェアやAIが進化していく中で、専門化が進むのか、それとも汎用化が進むのか、どちらを期待しますか?
Bieller : IFRでは、これがある程度バランスよく進むと予想しています。現在、一部の企業は、理論的には何でもできるベースロボットのような汎用的なロボットシステムに注力しており、専門的なアプリケーションを欠いています。
一方、特定の市場に特化した機能を提供する、ソフトウェアやアプリケーションに特化した企業も増えていくでしょう。例えば、ドイツのスタートアップ企業であるEnergy Roboticsは、資産やプラントの検査に特化しています。
Ryden : ある意味、より専門的になります。ソフトウェアが進化すれば、ロボットはより過酷で困難な課題にも対応できるようになります。そのような用途では、ロボットアームにユニークなエンドエフェクターを付けるなど、特殊な機能が必要になります。
Teele : どちらも必要ですから、両方を期待しています。特に、小規模な事業所や製造委託先では、ロボットシステムを1つの作業に集中させることができないため、再プログラミングが容易な汎用性の高いシステムが必要とされています。
しかし、より完璧にタスクをこなし、人間を退屈で、汚く、危険な仕事から解放するためには、専門化も必要です。
Prather : 両方ありそうですね。私の考えでは、すでに確立されたロボットやオートメーションのプロバイダーは、先に述べたような問題から、より多くの自動化産業に参入できるよう、より一般化に向かっていくだろうと思います。
しかし、その一方で、新興企業にとっては、ニッチな産業で必要とされる特殊なユースケースを追求するための門戸が開かれることになるでしょう。これは、ひいては資金調達や買収の分野も熱くする可能性があります。
Glynn:2022年にフルフィルメント業界が成長し、進化するにつれて、専門化は進むと思われます。ハードウェアはさらにカスタマイズが可能になり、企業独自のニーズや構成に対応できるようになるでしょう。
また、ロボット群やその他の倉庫自動化ソリューションも、特定のアイテムのピッキングやその他の特殊な作業を行うために、企業が必要とする形状やサイズにさらにカスタマイズされるようになると思われます。
ソフトウェアソリューションも継続的に強化・更新され、倉庫のオペレーションをリアルタイムに適応させ、究極の効率性を確保することができるようになるでしょう。
Elazary:私は、ロボットがより適応的になることと、より良いパフォーマンスを発揮することの両方が必要だと考えています。私たちは、自動化できるタスクの種類を、まだほんの一部しか把握していません。
inViaでは、まずピッキングから始めましたが、これはロボットに最適なユースケースでした。ピッキングは反復的で、人間よりもロボットの方がはるかに実用的です。その後、サイクルカウント、補充、積み戻しなどを追加しました。
このように、技術の精度が上がれば上がるほど、自動化する意味があるタスクはどんどん増えていきます。また、倉庫のインフラの変化に対応するために、より特化したインテリジェンスが作られるでしょう。
例えば、従来の倉庫だけでなく、オフィスビルや店舗裏にあるようなマイクロ・フルフィルメント・センターにも対応できるよう、システムを特化させる必要があります。これが特化した部分です。
しかし、特化したアプリケーションは、一般的なプラットフォームに統合されると思います。そのため、それぞれの専門分野に対応する企業が何百社もあるのではなく、専門的なアプリケーションを統合した自動化ソリューションを提供する企業が数社現れるでしょう。
対面式イベントへの期待
2022年、最も楽しみにしていることは何ですか?
Bieller : 間違いなく対面式のイベントです。
この2年間で、新製品や新技術の開発・導入は、パンデミックのような困難な時期にも、改善されないまでも維持されることが証明されました。
2022年には、私たちの分野でエキサイティングなニュースがもたらされると確信しています。ロボティクスの新しい使用例が次々と出てくるでしょう。この危機的状況下で、創造性に拍車がかかっています。
人脈、ネットワーキングの機会、そして対面での交流は、当たり前のことではないことを学びました。デジタル化されたイベントやミーティングが長く続いた後では、これらのすべてにもっと感謝することになるでしょう。
Ryden : 新しいユースケースです。2022年、ロボット工学とAIの継続的な発展により、ロボティクスの用途が拡大すると予想しています。
Teele : ARM Instituteは、製造業におけるロボティクスとその運用に必要なスキルの向上を目指す最大の全米コンソーシアムとして、330以上の会員組織と協力して、製造業のロボット活用を阻む最大の課題を解決し、最終的に米国の製造業を成長させることを最も期待しています。
Prather : 対面式イベントの復活は、2022年に向けてさまざまな面で大きな意味を持つでしょう。相互運用性など、必要とされるすべての会話が可能になるだけでなく、多くのエンドユーザーがAutomateのような展示会に戻って、これらの技術を見たり、自動化したい作業についてプロバイダーと話し合ったりすることができます。
個人的には、メンフィス大学構内のフェデックス技術研究所が3月に開催するR15ウィークで、そして年明けにオハイオ州コロンバスで開催されるR15ウィークで、ロボットセーフティの仲間たちに会えることを楽しみにしています。
より多くのロボットが公共の領域に進出し、地元のレストランや食料品店、あるいは歩道上の配達ロボットなど、一般市民と交流するようになると、2022年にはロボットの安全性が新たな局面を迎えることになるでしょう。
Glynn:6 River Systemsでは、効率性を高め、需要の増加に対応することで、お客様がどこでもより良いフルフィルメントを体験できるよう、これからもお手伝いしていきたいと考えています。
最近発表した英国の3PL(サードパーティ・ロジスティクス・プロバイダー)サイトで、複数の倉庫フロアで当社のChucksが使用されたように、よりカスタマイズできるようなソリューションを拡充しています。このような独自の課題に対応し、サイトのレイアウトに適応することは、大量生産ニーズを持つお客様の需要に応えるために 2022 年も続く取り組みとなるでしょう。
Elazary:Eコマースのさらなる成熟が展開されることを楽しみにしています。ボタンを押せば玄関先まで荷物が届くという素晴らしいプロセスを作り上げましたが、これはまだ初期段階に過ぎないのです。
これから毎年、技術を応用して、さらに洗練されていくことでしょう。スタートレックのレプリケーターが登場するところまで行くのが楽しみですね。それは来年ではありませんが、2022年には一歩近づきますよ。
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